AGEs
AGEs(advanced glycation end products:終末糖化合物)とは、グルコース(ブドウ糖)などの還元糖が、蛋白質のアミノ基と非酵素的に反応して生成される物質。AGEsは、特有の蛍光を持つ、黄褐色の物質。
糖尿病などで、慢性的に高血糖が続くと、循環血液中や、組織で、AGEsの生成が、促進され、血管合併症(糖尿病性血管障害)が発症する。
糖尿病性血管障害では、毛細血管障害が起こり、動脈側の毛細血管の基底膜が肥厚することが、特徴とされる。
AGEsは、RAGE(AGEsの受容体)に結合して、NADPHオキシダーゼ(NADPH酸化酵素)の発現を亢進させ、ROS(reactive oxygen species:活性酸素種)の産生を亢進させ、酸化ストレスを産生させる。
ROSは、さらに、Rasの活性化を介して、MAPKを活性化させ、NF-kBやAP-1を活性化させ、VEGF(vascular endothelial growth factor:血管内皮増殖因子)、MCP-1、PAI-1を発現させる。
VEGFは、血管内皮細胞を増殖させ、血管新生を促進させる。AGEsは、血管内皮細胞からのPGI2産生を低下させ、線溶を阻止するPAI-1発現を、増加させ、血栓が溶解されにくくなる。
なお、ニフェジピンは、RAGEの発現を抑制して、ROSの産生を抑制し、糖尿病患者でのAGEsによる血管合併症の発症を、予防すると考えられている。
AGEsは、動脈硬化を促進させる。
AGEsは、生体内で生じる(内因性AGEs)以外に、食物(食事)に含まれ、体内に吸収される(外因性AGEs)。
内因性AGEsは、グルコースが半減期が長い蛋白質と反応して、生成されると考えられていたが、近年、グルコースが半減期が短い蛋白質や、脂質や、核酸と反応しても、生成されることが判明した。
外因性AGEsの生成には、温度が、影響する。外因性AGEsは、食物を加熱すると、急速、かつ、多量に、生成される。10%の濃度のグルコースのMaillard反応は、80℃の温度では、5倍に増加し、130℃の温度では、25倍に増加する。
一般的に、脂質を多く含む食物は、高温で、長時間加熱すると、AGEsが、多量に生成されてしまう。
外因性AGEsの生成には、温度以外に、食物に含まれる栄養素(脂質量、蛋白質量、水分量、pH、等)が影響する。
調味料いも、AGEsが、含まれている:15mlの調味料に含まれるAGES量は、メープルシロップ795unit、米酢2,100unit、醤油(ショウユ)8,700unitとされる。
食物に含まれるAGEs量を、下表に示す(参考文献の日本醫事新報93頁の表1から改変し引用した)。
表 食物中のAGEs量(参考文献の日本醫事新報No.4154の93頁の表1を改変し引用した)
食品 |
栄養素(g/100g) |
調理条件 |
AGEs量(unit/g protein) |
炭水化物 |
蛋白質 |
脂質 |
温度(℃) |
時間(分) |
調理前 |
調理後 |
シリアル |
43 |
10 |
29 |
175 |
25 |
4,730 |
19,340 |
ペストリー |
46 |
7 |
14 |
160 |
5 |
2,590 |
60,820 |
ケーキ |
45 |
6.4 |
18 |
200 |
50 |
2,220 |
131,000 |
アヒルの皮 |
67 |
35 |
4 |
220 |
110 |
2,350 |
236,180 |
コラーゲンは、糖化され、AGEsが蓄積し易い。
糖尿病の人は、血糖が高い為、AGEsが生成され、動脈硬化、白内障などを来たし易い。
参考文献
・谷村恭子、他:糖尿病と生体内・食事由来の糖化最終産物(AGE) 日本醫事新報 No.4154(2003年12月6日)、92-93頁.
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